桃園の誓い‐劉備玄徳

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「逃がしてやっていいんじゃないか」 劉備の一言で黄巾賊の若者はようやく解放された。 「そこを右です」 馬崚は的確に甘洪の下へ三人を案内する。 「今日は確か黄巾党の幹部の孫仲が来ているはずですよ」 「孫仲?知らんな」 張飛は吐き捨てるように言った。 「まあ、知らなくてもどうでもいいですけど」 馬崚は笑いながら言った。しかし、黄巾賊を倒したい劉備にとっては必要な情報だった。 「孫仲とはどんなヤツなんだ?」 「そうですね、張家の三兄弟の次の幹部の三人衆の一人です。ずる賢く抜け目のないヤツです」 「なるほど。そいつを倒せば黄巾賊は弱体化するだろうか?」 「はい、かなりの痛手になるでしょう。ただし、逃げ回るのがうまい男でして」 「いろいろありがとう」 「いえ、いえ、関羽先生には世話になりっばなしですから、情報提供なんか喜んで話しますよ」 馬崚は両手で否定しながら謙遜そうに言った。 「ここです。この部屋です」 馬崚は廃寺の一番奥の部屋に案内した。昔はさぞかし立派な寺だったのだろう。馬崚に案内されなければここまでたどり着けないほど寺は広かった。 初めに張飛が戸を大きく開け放った。一斉に黄巾賊たちは劉備たちの方を見た。 「孫仲様、早く逃げて下さい。早く」 最初に反応したのは甘洪だった。甘洪はとっさの判断で孫仲を逃がすことにしたのだ。 「この裏です。早く、早く」 甘洪は後ろの隠し扉を開けて孫仲を促した。 「同志よ、すまない」   状況を察した孫仲は甘洪に促され隠し扉へと消えて行った。  
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