桃園の誓い‐劉備玄徳

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「官亥、孫仲様の後に続き孫仲様を護ってくれ」 「分かった」 すぐに官亥も孫仲の後に従った。 「孫仲を逃すな」 劉備が叫んで言った。 劉備たちが奮闘していると黄巾賊の一人が灯りを剣で切ったので、辺りが真っ暗になった。 「しまった、暗くて周りが見えない」 狭い室内である。灯りがないと仲間を斬りつける可能性があるのだ。 「頭だ、薄灯りを頼りに黄色い頭巾で判断するんだ」 関羽が的確に黄巾賊の頭巾を目印に斬りつけた。 「ばか、死にたくないヤツは頭巾を脱げ」 黄巾賊の一人が叫んだ。孫仲を逃がすためには、少しでも時間稼ぎしなければならないのだ。 「俺たちのシンボルの頭巾を脱ぐな!臆するな、闘え」 すると甘洪が叫んで言った。黄巾賊の誇りゆえ頭巾を脱ぐなと言ったのだ。頭巾を脱ぐ兵士と被り直す兵士の間に混乱が生じていた。 「えぃっ」 しかし、結局、張飛が黄巾賊の最後の一人を倒し、部屋には劉備たち四人しかいなくなった。孫仲が逃げてから二十分は経過していた。 「孫仲を追い掛けても、もう追いつくまい」 関羽の言葉にみんなは納得した。孫仲を討ち取れなかったのは残念ではある。 「それでは引き揚げるとするか?」 劉備の言葉に従い四人はアジトを後にした。 「兄貴ぃ~、待ってくれよ」 劉備たちが振り向くと黄巾賊の黄色い頭巾を被った、一際小さな兵士が劉備たちの後を追い掛けて来ていた。 「チビじゃないか?どうしたんだ」  
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