桃園の誓い‐劉備玄徳

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「ん?その手に持っているのは何だ?」 首領は劉備の手に持っているお茶に注目した。 「こ、これは母の大好物のお茶です。誰にも渡す訳にはいきません」 劉備は黄巾賊の首領からお茶を隠すような素振りを見せた。 「そうか、そんなに大切なお茶ならお前の母に上げるとよい」 「ありがとうございます」 劉備は黄巾賊の首領が意外に物分かりがいいので驚いた。 「では、行かせていただきます」 劉備は一礼すると黄巾賊の前を通り抜けようとした。 「待ちな!」 しかし黄巾賊の首領に腕を掴まれてしまったのだ。 「な、何です?まだ用事でも?」 「お茶はいいと言ったが条件がある。俺の名前は馬元義だ。お前の名前は?」 「劉備です」 「劉備何という?」 「そんなことを聞いてどうするんですか?」 劉備は怪訝そうな顔をした。名前を聞く意味が分からないのだ。 「それはもちろん親睦を深めるためだ」 「どうしてあなたと親睦を深める必要があるんですか?」 「それは劉君に黄巾党に入会してもらうためだ。若者なら一人でも多い方がいいからな」 馬元義はにこにこしながら劉備に答えた。 「嫌だと言ったら?」 「殺す。黄巾党ではない者は邪魔だからな」 劉備の返事に少し、馬元義はキレかけていた。 「俺は黄巾賊は嫌いだ」 「何だと?」 突然豹変した劉備の口調に馬元義は驚いた。さっきまでのおどおど感がなくなっているのだ。  
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