桃園の誓い‐劉備玄徳

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劉備より少し年下髭の若者は手近の黄巾賊をバッタバッタ倒し始めた。 劉備は官亥と対峙していた。官亥の力量を見ているのだ。劉備はコイツは強いと思った。 「おい、お前はかかしか?黙っていないでかかって来い」 官亥は劉備を挑発して威嚇した。 劉備は剣を強く握りしめたままだ。 「ほう…いい剣を持っているじゃないか?その剣と茶と金をくれたら生かしてやらない訳ではないぞ」 官亥は劉備にバカにした笑顔を向けた。 「生憎この剣は親の形見でね。お前のような卑しい賊に渡す訳にはいかないのさ」 「何だと?もう許さねー」 官亥は猛烈な勢いで劉備に剣をぶつけてきた。 (これは手ごわい。一筋縄ではいかない) 劉備は官亥の剣をかわすのがやっとだった。 「なんだ、元義の奴の腕を落としたから少しは出来ると思ったが」 劉備は官亥の剣をかわして少し離れた所に立った。 「さて、残りはそのウドの大木のみだな」 髭の男は黄巾賊の輩を全て一人で倒したのだ。 「うぬ、一人で倒したのか?信じられん」 いくら雑魚と言えど二十人はいた黄巾賊を一片に倒した男に官亥は驚いた。 「よし、俺が相手になろう。俺は燕人張飛。貴様が死ぬ前に名前を聞いてやろう」 「うぬ、これはたまらん」 官亥は二人対一人ではかなわないと思い敗走した。 「あははは。口ほどにもない。燕人張飛様の前に逃げて行くぞ」 張飛は高笑いして逃げる官亥を見送った。 「ありがとうございます」 劉備は黄巾賊を倒してくれた張飛に深々と頭を下げた。  
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