桃園の誓い‐劉備玄徳

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「あははは。お礼はけっこう、けっこう。ただ今日はちと飲みたいな」 張飛は杯で飲む真似をした。張飛は部類の酒飲みなのだ。 「おお、いいでしょう。今日のお礼にわたしのおごりで飲みましょう」 劉備と張飛は居酒屋風の店に入って行った。 「やあ、やあ。今日は助かった。ありがとう。では、お一つ」 劉備は酒と肴がテーブルに揃うと、張飛の杯に酒を注いだ。 「これは、これは、いたみいる」 劉備に酒を注いでもらうと張飛は一気に飲み干した。 「いい飲みっぷりだ」 「いや、けっこう。後はそれがしが自分で」 張飛は劉備から徳利を受け取ると杯に注ぎ始めた。 「しかし、あなたがあそこを通らなかったら」 「いや、虫の知らせとでも言うか、この道を通りたいと思ったんだ」 「ありがとうございます」 「もう礼はいいよ。飲ませてもらっているからね」 張飛は箸で焼いた鱒を美味そうに食べた。 「しかし最近の黄巾賊たちの狼藉ぶりには腹が立つな」 「本当だ。この輩は鼠のように増え続けて行く」 「政府も何をしてくれない」 「政府に期待するのは間違っているのかもしれないな?」 張飛は少し投げやりに言った。期待出来ない政府に幻滅しているのだ。 「俺たちが何とかしないとならんのかもしれんな?」 張飛は自分で注いだ酒を一気にあおった。 「わたしたちが何とかすると言っても何が出来るんだろうか?」 「あまり深く考えないで出てきた黄巾賊どもをやっけるしかあるまい」 「しかし、黄巾賊は侮れないな。さっきのは官亥だったか?あんな奴も紛れ込んでいる」 「劉さん、飲もう。黄巾賊の話は酒がまずくなる」   劉備と張飛は酒をたらふく飲んで張飛と別れた。
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