53人が本棚に入れています
本棚に追加
晶「………自販機がなんだか知らないのか?」
命「そっ、そんな訳ないでしょ!」
命「知ってるわよ自動販売機くらい、常識でしょ?」
晶「いや、まぁそうなんだが…………」
そこまでムキに否定する必要も無いだろう。
まぁ、携帯電話は知っていたしな、いくら箱入り娘だったとしても、さすがに自販機くらいは知ってるか。
命「自動で販売してくれるから、自動販売機でしょ?」
得意げに言う命。
晶「そうだが」
読んで字の如くだな…………。
………………。
晶「ちなみに、あそこの自販機は何を自動で売ってくれるか知っているか?」
命「えっ!?…えと、それはぁ~…………」
きょろきょろと視線が泳ぐ。
感情が表情に出やすいせいか、面白いように焦っているのが分かる。
命「あっ!」
何を思いついたのか、ポンと手を打ち、命は目を輝かせ、声高らかに言った。
命「缶詰!」
晶「……………………」
缶詰……………ね、確かに似てるし、売って無い事も無いだろうが………。
というか、缶詰を知っているのに缶ジュースを知らないってどういう事だろう。
どっちがよりポピュラーなのか。
謎だ。
命「もしかして……………違ったかしら……?」
晶「違う」
命「うっ、嘘!?」
嘘ってあんた。
まさか本当に知らないとは………。
命「え、えぇ~と、今のは、その、本当に知らないって訳じゃなくてね?……その、缶詰がね?自動販売機で…………」
知っていると言った手前、ばつの悪そうに視線を泳がせ、無意味な言い訳を繰り返す命。
その顔は羞恥の色に染まっている。
ため息が出る。
墓穴を掘るとはまさにこの事。
……………?
違うか?
晶「知らないなら知らないと素直に言え、別に悪い事じゃないから」
常識として問題あるとは思うが。
命「で、でも…………」
晶「言い訳は見苦しいぞ」
命「うっ…………仕方ないじゃないそんなの、自動販売機なんて使った事ないんだから」
膨れ、そっぽを向く。
まぁ、確かに仕方ないのかもしれない。
聞いた話によると、命はこうして夜に家を抜け出してくる以外、まともに外に出た事がないらしい。
外に出なくても、欲しい物はすぐ手に入り、家の庭も十分広いらしく、遊び場には困らなかった様だ。
つまり、自販機の缶ジュースなんて買う必要が無い。
自販機という存在すら知らなくても生活が成り立つ。
…………今思えば、それって相当金持ちって事か?
最初のコメントを投稿しよう!