自動販売機~孤高の黒猫~

6/9
前へ
/74ページ
次へ
そんな感じはしていたが。 割と凄い人物と知り合いになったのではないだろうか? じっと、命を見る。 命「な……なに?」 晶「………いや、なんでもない」 命「…………?」 まぁいいか。 とりあえず、命をほっぽって俺は自販機へと歩く。 途中、命が何か言っていた様に聞こえたが、とりあえず無視。 歩きながら小声で呟く。 色んな人間がいるものだな………と。 晶「……………」 帰って来たら。 ネコ「にゃー」 猫がいた。 命「あ、晶。お帰りなさい」 真っ黒な体に真っ白な首輪。 つまり黒猫。 猫は命の腕の中に納まり、撫でられ、ごろごろと気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。 晶「………………」 命「どうしたの?」 晶「………猫」 命「え?この猫?」 うむと、首だけで頷く。 命「この子、よくこの公園にいる猫なのよ」 晶「知ってる」 命「え?」 晶「名前はエスカリオーネ、通称エスカ」 命「え……えすかり?」 晶「この公園のすぐ近く、向井さんの家の飼い猫で、ここら辺一体のボス」 命「ボス?」 晶「そう、そいつは飼い猫ながらも、ここら辺の猫を統率するボス猫だ」 命「そ、そうなの………」 晶「そうだ」 命「貴方………なんでそんな事に詳しいの?」 晶「エスカは………」 命「エスカは?」 晶「エスカは俺の………」 命「俺……の?」 晶「………ライバルだ」 命「……………へ?」 間の抜けた声と共に、目が点になる命。 それを無視して俺は命の腕に抱かれたままの黒猫………エスカリオーネを睨む。 俺の睨みに負ける事なく、エスカリオーネは睨み返してくる。 晶(ここで会ったが百年目、今日こそ………今日こそ貴様を撫でさせてもらうぞ!) エスカ(ふっ……よかろう、やってみるがいい) 命「きゃっ!」 バッと勢い良く命の腕から飛び出すと、エスカリオーネは俺と対峙する。 その立ち姿は威風堂々と。 すっと、その吊り上がった瞳が細くなる。 エスカ(………小僧、少し見ぬうちに良い目をする様になったではないか) 視線と視線で語り合う。 幾度目の対峙かなど、とうに記憶の彼方。 確かな事は、そう………俺はこいつを一度も撫でた事が無いという事実だけ。 屈辱の日々が脳裏をよぎる。 晶(いつまでも……あの頃のままだと思うな) ふっと、笑う。 エスカ(ひよっこがぁ言いよるわ!ならばその言葉に恥じぬ実力とやらを見せてもらおうか!) 晶(後悔するなよ?)
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加