自動販売機~孤高の黒猫~

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エスカ(笑止!) 己の中の獣を奮い立たせる。 人と猫。 言葉など通じない。 しかし感じる、お互いが言わんとする事を。 一瞬の間。 戦慄が走る。 ―――シャキーン―――― 晶「―――勝負っ!!」 エスカ「―――にゃっ!!」 ………………………………。 死闘が…………始まった。 ……………………。 ………………。 …………。 数分後。 晶「…………くそう」 地面に這いつくばる俺がいた。 顔には無数の引っかき傷。 額にはご丁寧に猫の足跡。 敗北という字が脳裏をよぎる。 命「…………大丈夫?」 命は俺の横に屈み、心配している様で呆れた声をかけてくる。 這いつくばったままそれをじろりと睨む。 位置的に何か白いものが見えてしまったりしているが、そんなものはどうでもいい。 その命の腕の中にすっぽりと納まり、勝ち誇った様に俺を見下ろす奴。 目が合う。 晶(………これで勝ったと思うなよ) エスカ(負け犬が……見苦しいわ) 晶(ぐっ………!次こそ………次こそは!) エスカ(何度立ち会っても同じ事………) カッと、細められた猫目が開かれる。 エスカ(貴様にわしは撫でられん!!) 晶(無念!!) そうして、俺の意識は闇に落ちた。 ………………。 ……………。 ……気がした。 ……………………。 ………………。 ……………。 …………。 命「ふ~ん、晶って動物が好きなんだ?」 隣で命が意外そうに呟く。 その腕の中にはエスカリオーネの姿はない。 俺との決闘の後、そのまま公園から去っていた。 命から借りたハンカチで、エスカリオーネとの激戦で出来た傷口を拭く。 蚯蚓腫れが少し痛い。 晶「まぁな、三度の飯よりは好きだ」 命「そっ、そうなの…………ちょっと意外ね」 晶「そうか?」 命「そうよ、何て言うのかな?こう、雰囲気というか、晶はあまり『動物』という感じがしないもの」 晶「そうか?ぶっちゃけ俺の夢は獣医になる事だが」 命「獣医!?」 心底驚いた声と表情をする命。 その表情のまま俺を数秒見つめ、口を開く。 命「似合わない」 晶「失礼な」 命「だって、本当に似合わないんだもの」 クスクスと、楽しそうに笑う。 本当に失礼なやつだ。 命「どちらかというと、晶は『外科医』という感じ」 晶「いや、それは間に合ってるから」 命「え?どういう意味?」 晶「俺の姉さんがな、医者なんだよ」
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