鈴の音~漆黒の夢~

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その日も、いつもの様に俺は学校からの帰り道を歩いていた。 しかし、辺りの暗さや静けさがいつもと少しだけ違う。 生徒会の仕事が思うように進まず、帰る準備をし始めた頃には、時計の針は夜九時を指していた。 公園の入り口にさしかかると、足を止めた。 公園に入り、ベンチを見てみる。 そのベンチの指定席に、彼女の姿は無かった。 晶「ま、流石にこの時間だ、いる訳がないか」 いられても少し困るが。それに今日は天気も悪い。 雨が降っていないにしても、厚い雲が空を覆っている。 星が見えない。 こういう夜は嫌いだ。 何か起こりそうで居心地が悪い。 晶「………帰るか」 公園を去ろうと踵を返す。 ――――リリン―――― ―――ガシャン!―― 晶「―――ッ!」 一瞬。 ほんの少し、しかし、たったそれだけで頭が割れてしまいそうな頭痛が走る。 視界が赤に染まる。 晶「っく………」 しかしすぐに視界はクリアになり、頭痛は消える。 ――――…………。 晶「…………ったく」 ……一体なんだったのか? この頃こういった頭痛に襲われる事が多くなった、何かの病気でなければ良いが。 晶「…………それにしても」 頭痛に襲われる前、どこかで聞き慣れた鈴の音がした気がした。 もう一度足を止め、周りを伺う。 晶「今の音は…………」 命がつけていた鈴の音に似ている。 しかし、先程公園に彼女の姿が無いことは確認済みだ。 空耳だろうか? それともやはりこの近くに命がいるのか? 胸騒ぎを抑えて、もう一度公園に戻り、ベンチを確認する。 やはり誰もいない。 念の為、辺りを見回す。 確認するまでもなく、公園に人の姿はなかった。 ―――こんばんは――― 晶「っ!」 瞬きの一瞬。 目の前に人影が写る。 誰もいないはずの公園。 その一瞬で、少女は現れた。 漆黒。 第一印象はそれだった。 身長からして子供、多分小学生高学年位か。 この夜の中で、電灯の光すら否定し、自らの漆黒を主張する黒髪。 その黒の間からのぞく瞳もまた、深い闇を思わせる黒。 この世の全てを見透かしたような視線。 ゾクリとする。 いつの間にか背中に冷たい汗が流れていた。 漆黒の少女「今日は良い夜ですね」 言って、ニコリと漆黒の少女が笑う。 幼い姿と相反し、その物腰、存在感はとても大人びていた。 晶「………どこが良い夜なんだ?」 今日は曇りだ、星の一つも出ていない。
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