鈴の音~漆黒の夢~

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これは、とてもではないが良い夜とは言えない。 漆黒の少女「あら、星が綺麗なとても良い夜ですよ?」 と言って、少女は空を指差す。 吊られ、俺は空を見上げ――― 晶「なっ―――!?」 絶句する。 確かに先程までの空は、月はおろか、星の一つも望めなかったというのに。 漆黒の少女「――ほら、とても綺麗な……」 晶「赤い…………空」 そこには、真っ赤な星の海が広がっていた。 月は出ていない。 その赤は、まるで血の紅。 これは一体なんだというのか? 一瞬にして雲が晴れた? だとしても、この赤はなんだ? 夕焼け? そんな馬鹿な、この時間、太陽など当の昔に沈んでいる。 有り得ない。 この目に映る夜空が、見渡す限り赤いなど。 ましてこれだけの数の星があるというのに、月が出ていないというのはおかしい。 月食でも起こっているのか? それとも、この星々を映し出している俺の目がおかしいのか? まさか夢なのか? そう思い自分の頬をつねる。 痛い。 夢ではない様だ。 ………………。 漆黒の少女「真紅の夜」 晶「―――!」 混乱しかけた頭が、少女の言葉で正常に戻る。 ゆっくりと、視線を下ろし、少女の姿を確認する。 漆黒の少女「素敵だと思いませんか……晶?」 ニコリと微笑む。 晶「………君は?」 漆黒の少女「警告します」 俺の問いに答えず、少女は言葉を続ける。 漆黒の少女「残り、四日です」 晶「…………?」 残り、四日。 そう聞こえた。 何がだ? 少女は警告だと言った。 そして残り四日。 ………………。 晶「…………意味が解らない」 漆黒の少女「あら?本当に解りませんか?」 晶「あぁ、解らない」 そうですか、と少女は呟く。 警告。 残り四日。 それで一体何を解れというのか? そう、少女に視線を投げかける。 しかし少女は何も言わない。 しばらくその状態が続く。 ふと、周囲が無音だという事に気がつく。 この赤い夜の下では、この少女の声しか聞こえてこない。 その声が、鼓膜に響く。 漆黒の少女「貴方は、とても不思議な存在です」 晶「なに?」 漆黒の少女「貴方は自分というものを持ち、周りに流される事が無い」 漆黒の少女「それはとても強い意志と心」 漆黒の少女「けれど、自身はその心の内を把握する事ができない」 晶「………?何を言って………」 漆黒の少女「………いえ、貴方はこの世界に存在するどんな存在にも、決して理解されない存在」
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