鈴の音~漆黒の夢~

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漆黒の少女「この世界という箱庭………その外に位置する存在の一つ」 晶「………………」 少女の言葉。 それは俺にはよく解らない内容。 自分の事を言われているのに、なにか自分に向けられた言葉ではない様な感覚。 その意味は理解できないのに、なぜか的を得ていると解る。 止まらず、なおも少女は言葉を紡ぐ。 漆黒の少女「生身の人間でありながら、この真紅の空を見上げる事が出来る」 漆黒の少女「理解するつもりもなければ、理解できる訳でもない」 漆黒の少女「ただそこに在り続ける事が出来る」 漆黒の少女「ただ、それだけ」 漆黒の少女「けれど、だったそれだけで、貴方はこの世界の均衡を崩す事が出来る」 漆黒の少女「………………」 そこで少女は一度口を閉ざす。 何かを考える様に。 そしてなぜか悲しげに。 漆黒の少女「とても、不思議な存在です」 …………どういう事だ? 生身の人間? 少女を見る。 その言い方は、まるで自分が生身の人間ではないような言い方。 それに、世界の均衡………。 それを俺が崩す? 赤い夜の下、無音の世界。 解らない。 何もかもが突然すぎる。 晶「―――っ!?」 いきなりぐらりと視線が揺れる。 ゆっくりと意識が朦朧としてくるのが解る。 (なんだ……?) 足が動かない。 立っているのがやっとの状態。 何か、体の中から魂が抜けてしまう様な…………そう、思わせる感覚。 漆黒の少女「どうやら、今日はここまでの様です」 晶「……どういう……………意味、だ?」 脂汗をぬぐい、何とか声を出す。 とたん、ガクリと膝の力が抜け落ちる。 倒れはしなかったが、片膝を付く体制になってしまう。 漆黒の少女「………あまり無理なさらないで下さい」 少女は、本当に心配そうに声をかけると俺の前に屈む。 漆黒の少女「先程の問いに答えましょう」 漆黒の少女「私は……凜……そう昔呼ばれていました」 凜「失礼」 小さな両手を頬に置き、俺の頭を引き寄せると、凜はコツンと、その額を俺の額に押し付ける。 その額は、ひんやりと冷たかった。 そのままの状態で少女は話しかけてくる。 凜「………いずれ、貴方の答えを聞かせてください」 晶「な、んの………答えだ?」 答えず、額をつけたままニコリと微笑み、少女は目を閉じる。 吊られる様に、俺も目を閉じた。 真っ黒い闇が、視界を包む。 少女と合わさった額から、何か自分の中に流れてくるのが感じられた。
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