鈴の音~漆黒の夢~

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それはとても暖かく、優しい何か。 凜「………そのまま、ゆっくりとお戻りください」 凜「貴方が存在すべき、あの場所に………」 ぎゅっと、頭を抱きしめられる感覚。 深く暗い闇が、俺を誘う。 そのまま抗う事なく、その闇に落ちていく。 凜「また、この真紅の夜空の下で………」 お会い、いたしましょう………。 その声を最後に…… ――意識が、途絶えた。 声「―――起きろ」 晶「…………んぁ?」 目を開ける。 目の前に見覚えのある…………というか、すでに見飽きた顔があった。 視界一杯に広がるそれ。 月村朱璃………俺の姉さんだ。 朱璃「起きたか」 晶「あ………れ?」 ここは………? 上体を起こし、まだハッキリしない頭であたりを見渡す。 居間だ。 そこは見間違うはずもなく、確かに俺の家だった。 ソファーに寝ていたせいか首が痛い。 晶「俺は確か………」 公園にいたはず……。 ――――ッ!? 頭痛と共にあの赤い空の光景が目の前に広がる。 (そうだ、俺はあの時公園で…………) 警告……答え……残り四日………赤い空………。 世界の均衡、不思議な存在。 奇妙な空間。 そして黒い少女。 あの少女は一体………? なんだ? 一体なんだったんだ、あの星空は? ………………。 …………。 ? ちょっと待て。 晶「姉さん」 朱璃「?」 じっと、俺の様子を伺っていた姉に声をかける。 色々と気になる事があったが、まず簡単に解決出来そうなことから解決していこう。 晶「俺はどうやって帰ってきた?」 そう、とりあえずその頃の記憶がない。 朱璃「引きずって」 晶「は?」 引きずって? 姉は淡々と語る。 朱璃「晶、公園で寝てた」 晶「寝てた?」 朱璃「そう、だから引きずってきた」 晶「…………姉さんが?」 朱璃「そう」 晶「…………なぜ?」 朱璃「一緒に帰ろうと思った」 なぜか満足げの表情。 引きずってきた? あの公園から家までか? まぁ、あの公園と家とはそれほど離れていないから、姉さんの細腕でも引っ張ってこれるだろうが………。 朱璃「足を引っ張ってきた」 なぜか褒めてといわんばかりに嬉々としている姉。 ………………。 ……………。 …………。 ってか。 晶「起こせよ」 普通に。 朱璃「……………」
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