見上げた星空~純白の少女~

3/15
前へ
/74ページ
次へ
慣れとは恐ろしい。 しかし、今日は疲れた。 新入生のオリエンテーションの準備やら後始末やらで忙しかった。 生徒会副会長、しかも貴重な男手なので嫌でも仕事量は多くなる。 右手で肩を叩きながら、左手に持ったスーパーの袋を持ち直す。 これから夕食の準備をしなければならないと思うと気がめいる。 別に一人暮らしをしている訳ではない。 ではなぜ俺が食事の準備をしなければならないかと言うと、俺に両親がいないことが挙げられる。父親は俺が生まれる前に事故で他界。 もともと体の弱かった母親は、俺の出産に耐え 切れずそのまま亡くなった。 比較的この世界ではよくある話。 問題ない。 その後は十歳年齢の離れた姉と共に、父親の祖父に引き取られ生活してきた。 そしてその祖父は三年前に他界。 享年八十九歳、寿命だろう。 最後までエロ爺だったということは覚えている。そういった事情から、今は医者をしている姉と二人暮らし。 そして、唯一の肉親である姉・月村朱璃(つきむらしゅり)は、医者という職業柄、夜遅く帰ってくる事がほとんどだ。 祖父から受け継いだ個人病院であるとはいえ、医療関係の職業は、定時に仕事が終わらないものだ。 家に帰らず、病院の方に寝泊まりする事もざらなので、二人しかいない家族、必然的に家事の類は俺の仕事になる。 晶「お、流れ星」 目の端に、一条の光の帯が映る。 星座がどうのこうのというほど詳しくはないが、基本的に星を見るのが好きなのだろう。 何年眺め続けても、この星空を飽きることはない。 晶「しかし……今日は本当に綺麗だなぁ」 空を見上げながら呟く。今日は三日月。 ちょうど良い月明かりで星が綺麗に見える。 今日の夜空は、今まで見てきた夜空の中で、五本指に入るのではないかと思うほど。 気のせいとか気のせいとか気のせいとか、まぁ色々な要因があると思うが、今日の空はそれほど綺麗だ。 などと思っていると、ちょうど良く公園が目に入る。 入り口で足を止め、数秒考える。 晶「………せっかくだし、少し眺めていこう」 ポケットから財布を取り出し、入り口の横のポツンと置いてある自販機で、缶コーヒーを買う。 ホット缶の暖かさが心地いい。 春とはいえ、この時間帯は肌寒くもなってくる。公園に入り、ちょうど良い具合にその姿を表したベンチに腰をかける。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加