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晶「ふぅ~………」
少し見上げすぎたか、首が痛い。
ぐるんぐるんと首を回す。
息をつき、缶コーヒーのフタを開け、一気に飲み干す。
晶「っぷはぁ~……ごちそうさまっと」
飲み干した缶をベンチに座ったままゴミ箱に投げる。
缶は軽い放物線を描き、見事ゴミ箱の中に消える。
当然だ、ベンチのすぐ横にゴミ箱がある、投げる必要すらない。
背もたれに体重を預け、空を見上げる。
先程まで見上げていた空と、変わらない輝きが視界に写る。
晶「さて、今日の晩飯はどうするか」
今日買った材料と冷蔵庫の中にある物を模索する。
料理の腕前には自信があるが、なにぶん今日は疲れた。
肉体的にも精神的にも。
晶「はぁ、面倒だなぁ………」
晶「そういえば、カップ麺があったな…………面倒だし、今日はそれでいいか」
息を吐き、星を眺めたその姿勢のまま目を閉じた。
全身の力を抜き、思考を闇と同化させる。
しんと、静けさがあたりを支配する。
今日は気持ちの良い夜だ。
--リリン--
鈴の音……………?
?「そんな所で寝てると、風邪を引くわよ?」
視線を向ける。
それは、夜の闇に溶け込むことのない純白の長髪。
その白髪にも負けない真っ白な肌。
その双眸は凜とした光を内包した赤。
少し高めの声が鼓膜に響く。三日月の夜、幾重もの交差する星空の下。
白銀の光を背に、少女はそこに立っていた。
(………誰だ……?)
見たことのない子だ。
見た目で判断すると、年頃は俺と同じか、一つ違いか程か。
小柄だが、なぜか偉そうな雰囲気を纏っている。
――ジジッジジジ―――
晶「ッ!?」
(な………んだ?)
一瞬、頭にノイズが走る。
立ちくらみ?
いや、俺は今座ってるだろう。
チクリと、こめかみに針で軽く刺したような痛みが走る。
しかし、その痛みは一瞬で何事も無かったように消えた。
晶「………?」
…なんだったんだ?
少女「聞いてるの?風邪を引く、と言っているわ」
ボーっとしていたらしい俺を、少女は呆れた様に眺め、言い放つ。
俺は軽く頭を振って答える。
晶「……いや、別に寝ていた訳じゃないが」
少女「嘘よ」
晶「は?」
少女「そのまま死んでしまうかと思うくらい、穏やかな表情をしていたもの」
少女「絶対に眠っていたわ」
……死にそうなくらい穏やか?
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