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 暗い……いや、黒いのか?  翔太のヴィジョンには何の風景も映っていない。暗闇だ。しかし翔太には確かにその暗闇を空間として見えていた。 「…夢?」  確かによく夢の中で夢だと気づくことはあった。だが夢にしては五感がリアルで、肌で空気の流れを感じることさえできた。  翔太はさっきまでの自分の心の中を見ているような不思議な感覚を覚えていた。さっきまでそこにあった何かが突然消えてしまった様な……  そのとき突然それまでの“無”を破るように視界には文字が白く浮かび上がり、どこからか声が聴こえてきた。   『水沢翔太様』    女性の声だ。留守番電話のアナウンスのような整った声。目の前の文字の通りに喋っている。急に現れた謎の文字と声に翔太は困惑した。そんな翔太には構わずその声は話を続けた。   『ようこそバーチャルリアリティー空間“ペルソナ”へ。ここはあなた方の現実とは別の空間に存在しています。これからこちらのルールに従ってこの空間から脱出してください。あなたはこの後2つのドアがある部屋で目を覚まします。』   (目を覚ます?やっぱり夢なのか…)  翔太は理解ができなかった。とりあえず脱出すればいいのか、それすらあやふやだった。それでもアナウンスは淡々と進む。
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