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ところがその期待は見事に裏切られた。本当に目が覚めたのだ。しかもそこは自室のベッドの上ではなく木製の堅い椅子に座っていた。
部屋は薄暗く、小屋のような造りで、そのイメージに不釣り合いな装飾を施された2つのドアが目に入った。辺りは静寂に包まれている。
翔太は椅子からゆっくりと立ち上がった。足の震えが自分でもわかった。恐る恐るドアに近づいていく……そのとき
『村崎天音、RESTART』
アナウンスが響いた。翔太はビクッとして後ろを振り返った。
最初は単に静寂を破って耳に飛び込んだ女性の声に驚いただけだったのかもしれない。しかしそれも束の間、翔太はアナウンスの発した言葉の意味に気づいてしまった……人がいる。不安が翔太に襲いかかる…
(嘘だろ……そんな…)
翔太はわかっていた。しかし認めたくない。頭の中ではその人が全くの別人であることを祈っていた。
するとその人は訝しげに翔太に声をかけてきた。
「…誰?…」
その瞬間、翔太の期待はまたしても打ち砕かれた。聞き慣れた声…
翔太は自ら近づいて行く。
間違いない…
そこにいたのは紛れもなく翔太のクラスメイト・村崎天音だった。
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