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「鋭二(えいじ)さん、ネクタイが曲がっているわ」
「おっと、鏡を見たつもりなのになぁ。ありがとう」
妻がいつものように、出勤前の身だしなみを整えてくれる。俺はそれに従う。足元には、まだ幼い娘がいて、まさに理想の家庭だった。
事件は待ってくれなくて、いつ凶悪犯罪が発生するかは、誰にも理解らない。
ただ、家族と交わした約束は、なるべく反古にしない方向で働いている。仕事も完璧だった父親は、ドラマなどでありがちな、家庭を顧みない人間などではなかった。
仕事は完璧に。だが家庭、いわば家族もないがしろにはしない。
そのために俺は、色々な事を必死になってこなしてきたのだ。
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