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頭では冷静に考えているのに、行動は半ば強引なもので、下手に動けば大切な家族を人質に取られかねない。そんな状況にも関わらず、気が付けば俺は、電気も点かない暗闇の部屋に立ち尽くしていた。
その夜は珍しく、月明かりがさすくらいの明るさで、仄かに周囲が見えていたのだ。
フローリングの床に血は染みて、仕事帰りで疲れた俺を、暖かく迎えてくれる筈の妻が、冷たくなって、無惨な姿で横たわっていた――。
ふらふらと、認めたくない現実を目の当たりにして、妻の前に跪く。
そこには確かに、妻がいた。
――子供は?
不意に疑問が浮かび、立ち上がると家中探し歩く。
……愛しい我が子は、バスルームでばらばらにされて、散らばっていた。
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