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そのイメージが鮮烈にあるせいで、ゆりこは気がつくとミチルを探してしまっている。
あの時はっきりと見れなかった胸の厚み、下腿の筋肉、上腕の筋肉、正確な背丈、体毛は濃かったか?などをもう一度確認したいと思う気持ちを押さえられなかった。
三十を過ぎたというのに大人気ないが、それは恋それも一目惚れなのだと心の奥が囁く。
それを押さえつけると息苦しさを覚えた。
「彼のことが気になるの?」
パソコンのディスプレイに小さな文字がヂヂヂと音を立てて浮かび上がった。
それは彼女にしか見えないモノで、子供を流産した後から見えるようになった不思議な現象だった。当時、元夫にすすめられて行ったクリニックでは流産のショックによる一時的な混乱でしょうと言われたが、現象は三年経った今も続いている。彼女は音にちなんでそれにヂヂという名前をつけ、心の中でつぶやいて返答した。不思議な会話がそこで成立していた。
「そうね、でもダメよ」
「どうして?」
「美しいから」
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