†恋の鐘。

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  あたしが電話をするときは、必ず寂しいとき。 豊はそれを知っているから、何も言わずに場所だけを聞く。 迎えに来てくれて、豊の家に泊まって。 でも、豊は慰めてはくれなかった。 抱き締めてほしいのに。 《好きだ》って。 《泣くな》って。 そう言ってほしいのに。 豊は一度も言ってくれない。 ただ豊は隣で本を読んでいるだけ。 最初は、それでも傍にいてくれるだけで、安心できた。十分だった。 なのに、あたしの欲求は膨らんでいって。 何も話してはくれないの? 何で寂しいか聞かないの? 何で、平気でいられるの? 「あたし…帰るね。 …ごめんなさい」 あたしは立ち上がり、制服をただす。 豊は本を読み続け、あたしの方を見向きもしない。 やっぱり、あたしのこと何とも思ってないじゃん。 嫌いなら、めんどくさいなら、そうはっきり言ってほしいのに。 胸が張り裂けるかのように痛い。 息ができないくらい、胸が苦しい。 全部、貴方が好きだから。 あたしは、ギターケースを肩にかけ、ドアノブに手をかけた。    
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