87人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、今回は少し違う。
「ゆ…豊っ」
あたしの言葉に豊は立ち止まる。
不思議そうに見つめる豊は、しばらくして口を開けた。
「どうしたの?
いつもは何も言わないのに」
豊の言葉は嘘じゃなかった。
豊に対して、反抗も甘えも、何もしなかったあたしがいきなりいつもとは違う
態度を見せたのだから。
びっくりさせたよね。
嫌われてないかな…
あたしって、本当に嫌な女。
前はこんなに、豊の顔色伺ってなかったのに。
いつしか、何をするにも、何を言うにも、豊の顔色ばかり伺うようになってた。
あたしは小さく"ごめんなさい"と言った。
それに対して豊は、表情を変えずにまるで何ごともなかったかのように、歩き出した。
豊の家は学校から近い。
電車で通っているあたしは豊と一緒に登校したことがない。
豊は《朝は嫌だ》とストレートに言ったのだ。
さすがにその言葉はあたしにはきつかった。
あたしは豊に連れられて家の中に入った。
「おじゃまします」
「…今日親いない」
豊は淡々と喋り、二階へ上がっていった。
あたしも豊の後を追うようにして、二階へ上がった。
最初のコメントを投稿しよう!