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夢から覚め、「何だ悪夢かと言い」いらいらしながら
弘貴は自室へもう一度向かった。
階段を上り、廊下を歩いてドアノブを握ろうとする。
「掴めない、だと・・・?」
目を大きくしていたら脳から声が聞こえた。
「どうだ?調子は」
高いとも低いと言え無い微妙な声。
「俺と・・・ほぼ同じ声」
弘貴と声がそっくりな声が脳から聞こえた。
「これからお前の周りの人間や全ての人間の脳から
お前が存在していた記憶が消えていく
そしてそれと同時にお前の姿も消え
自分でも見えなくなる
足下を見ろ」
声の主は淡々と答える。
それと同時に、弘貴は足下を見た。
「下半身が・・・無い
おい、嘘だろ」
自分を触ろうとするが、すり抜ける。
取り乱しているのがよく分かる。
「なんなら家族の所へ飛ばしてやるよ」
弘貴は1階の台所へ飛ばされた。
家族は母と父だけ。
四つ椅子があるテーブルを二人で使い、
いつもの様に普通にご飯を食べている。
「弘貴は何処行ったのかしら」
と、言う母と
「さー、知らん」
と言う父。
「何も変わってねーじゃねーか」
と、言う弘貴。
「じゃあ、明日にしてやるよ」
一瞬暗くなったと思ったら、
父と母が台所で喧嘩をしていた。
いつものように。
弘貴が居るときと変わらない様子で。
弘貴は何か悔しかった
自分が居てもなにも変わらない事実を見て。
「何でこんな事したんだ!」
喧嘩をしている家族を背に
弘貴は声の主に思わず叫ぶ。
「お前、前々から自分なんて消えればいい、
存在しない方がみんな幸せだって思ってたんだろ
俺がそれを叶えてやったんだ
逆に感謝してほしい」
声の主はまた淡々と、続けて言う。
何も言い返せない弘貴。
「あ、学校の奴等も同じだから」
それを聞いて更に動揺する弘貴。
やっと気付いたのであろう。
やっぱり忘れられたりするのは嫌だ、と。
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