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第三話:見つめる:
二人は、放課後になると決まって
学校のグラウンドに来ていた
目的は秀一の所属する野球部の見学
二人はそれをただ見ているだけ
ただ、それが空にとっては至福の時だった
「声出して行くぞー!」『おぉおお!!』
部長の掛け声と共に野球部の練習が始まる
今日の練習メニューは
アップ(校庭10周)→キャッチボール→
バント練習→フリーバッティングの練習だ
二人は、いつもバント練習までを見て帰る
(バント練習までは固定のメニューなのだ)それが二人の日常であり暗黙の了解だった
アップが終わり、キャッチボールも終わる頃空の目は幸せそうにキラキラと輝いていた
それを見て、嬉しそうな空に美佳子も喜ぶ
そんないい循環を二人は日常行なっていた
しかしバント練習の時間、事件は起こった…
「ぐあっ!!」
秀一のバント練習中、低い声が小さく響いた
「しゅ、秀一!!?」
「ん?空、どうかした?」
美佳子には声が届いていない
しかし、空は完全に秀一の声を聞き取る
指を押さえ、バッターボックスを離れる秀一
空は心配と不安でいっぱいになった
「……秀一…。」
しかし、野球部のグラウンドにいる以上
空が近寄ることはできない
そわそわする空
「どうしたんだろね…秀一君…。」
空の様子に、美佳子も秀一が心配になる
その時、秀一が監督も元に行き何かの話を
すると静かにグラウンドを出た
秀一の向かった方向を見るに
保健室に向かったと思われる
指を押さえとても痛そうな秀一
それを見た空はすぐに走り出した
すぐに秀一の元に辿り着いた空
「……秀一!!」
その声に秀一はすぐに振り返る
「佐伯…?お前何してんだ!?」
空にとても驚いた秀一は咄嗟に指を隠す
「秀一…指…大丈夫!?見せて?」
空は秀一の手を静かに取り
腫れ上がった指を見て涙ぐむ
「凄く痛そうだよぉ…大丈夫…?」
秀一を泣きそうになりながら見る空に、
秀一はまたしても激しく驚いた
「バ、バカ何泣いてんだ。これぐらい全然大丈夫だっつの!泣くな!大丈夫だから!」
「よかったぁ…。」
秀一のその言葉に安心した空は
涙ぐみながらもニコッと笑った
そして、秀一と空は保健室へと向かった
一方…美佳子は…
「おーい…私はどうしろと…?」
未だ野球部の見学場に取り残されていた…
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