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「え?え?」
「なにしてんの?早く投げなよ。僕は現役の時は捕手だったからね心配はいらないよ。」
「で、でも僕は野球部にまだ入るって言ってないですし…」
「小さな事は気にしない気にしない♪早く投げてきなよ」
「あ、はい…」
目を閉じ大きな深呼吸を
した後に目を開いた。
それを見た監督は
(うん、良い目になった。)
「さぁこい、斎藤君!!」
右足を引き両腕を上げ振り被る
そして右足を上げ前に踏み込み
全体重を右足に乗せ
全ての力を指先に集中させる。
(え!?)
監督はそう思った。
美しいそのフォームから
自分の構えたミットへ
寸分の狂いなくボールがきた。
しかも現代で幻のストレートと
謳われているジャイロボールが…
ズバンという音だけが
二人きりのブルペンに響いた。
「スゴい、君がいれば県大会優勝…いや、全国制覇も狙える!!」
「いやそんな事ないです。」
「是非、野球部に来てくれ!!!」
「え、でも…僕は…」
『やりてーんだろ?野球をさ』
「え?」
そう言われたので振り返ると
そこには省吾と昌也がいた。
「和也、やろうぜ野球。」
「そぉだぜ斎藤!!また俺と勝負しよーぜ!!」
「ふ、二人とも…」
「だそうだ。どうする斎藤君?」
またイジメられるかもしれない
でも野球が好きだ。大好きだ。
自分を真正面から心から
必要としてくれる人がいる。
なにより仲間が、友達がいる。
涙が出てきそうになったが
ここはグッと堪えて
「や、やります…野球やらせて下さい!!」
嬉しかった心から嬉しかった
また大好きな野球が出来る。
今度は心許せる友達がいる。
晴れて和也は野球部に入部した。
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