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その日、和也の唯一の味方の省吾は選抜チームに選ばれていたのでちょうど不在だった。
「おぃ和也ぁ、フリーバッティングさせてくれよ。おぃおぃまさかこの田中信吾の頼みを断らないよなぁ?」
「う、うん」
田中信吾、彼こそ和也のイジメの主犯者だった。彼も全国的に見ても上位に食い込む程の実力者だったが体調不良の為に選抜を辞退していた。
「あらよっとぉ!!」
「うわ!!!」
カーンと乾いた音と共にボールが和也の顔の横を通り抜けた。
「おぃおぃ、もっとピシッとした球投げてくんないと練習にならないぜ?」
「う、うんごめん。」
(あれ…肘が痛いし肩も重たいな…そのせい…かな?)
それからの30分間信吾の打球はひたすら和也の体に当たっていた。
素人が見てもあからさまにわかる体に直撃を狙った打ち方だった。
「あーぁ飽きたなぁ…和也ぁバッターボックスに入れよ。いつもいつも投げて貰って悪いからな打たせてやるよ。」
「うん」
この選択が事件の引き金となった。
「おらよ!!!!!!」
「うわぁぁぁ!!!!!」
和也の断末魔と鈍い音が響いた…
そこにはボールの直撃を喰らった肩を抑えもだえる和也がいた。
「う………ぐ……」
「悪い悪い手が滑っちまった。今度は気をつけるからよ。」
「う………あ……」
「いくぜ、ほらぁ!!!!!!」
「うわぁぁぁ!!!!!!!」
次は肘に直撃を喰らった。
しかも肘が普通ならたてない音をたてて
右手で握っていたバットも落とした。
右手の感覚がなかった…肩から下を切り落としてしまいたい位の激痛が肘と肩を中心に身体中を廻っている。
「ぁ………ぁ………あぁ……」
「よけねぇ奴が悪いんだよ!!」
この事件で和也は右肩と右肘の両方を壊した。
後日に省吾が鬼の形相で信吾を殴っていた…
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