梓良[しら]

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 "果て"。  この世界には果てがある。  ――正確には、この世界の西と南には果てがある。  大地が突然途絶えていて、まるで崖のように切り取られた大地の向こうには、ただひたすら暗い奈落が広がっているのだという。    反対に北と東には果てがない。  ただ青々とした海が広がっている。果てを探しに多くの探検家が船をだしたが、全てのものが帰ってこないか、見つからずに諦めて帰ってくるのだという。  ――ひとびとは言う。  海の向こうには神の国があるのだと。  なら、西の果ての向こうには魔の国があるのではないか。 では夢のなかで聞いた怨嗟の声はその国の住人のものだった……? 「あぁ、そうだ」  そんな梓良の思考を打ち切るように神父が言った。 「我々――聖職者のなかで"西"といえば天貫山の中腹にある大聖堂のことです」
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