虐待

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地響きのような悲鳴。 髪を掴んで無理矢理に起きあがらせる。 前歯5、6本がなくなった口元には締まりがなく滑稽に見えて笑えた。 「ぶち殺すぞ、コラ。あんたの娘だろうがよ」 「だ、だから知らな」 膝を鼻っ柱に放つ。 メキャッという発泡スチロールを壊したような痛快な音。 汚れた畳に顔を埋めながら泣き叫ぶ女。 その女の頭を思いっきり踏みつけてやる。 アリを踏むのとなんら変わらない気持ちだった。 痛そうな感覚が伝わってきそうな叫びが家中に聞こえる。 いい悲鳴だ。実に面白い。 ……ちょっと古いかな。 「あ、あんた気が狂ってる」 「狂ってるのはお前だバカ野郎。何がプライバシーだ。やっぱり虐待してたじゃねえか」 女は怯えきった目をしていた。  
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