プロローグ

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夜…。 暗くて広い部屋の中に一人の男がいた。 男の片手にはケータイがあり、食い入るようにパソコン画面を見つめながらキーボードを操作している。 そのパソコンとケータイはケーブルで繋がれていて、ケータイには「データ送信中」の文字、パソコンには「チョーク…15800円、学習机…354000円、印刷用紙…10000円……」など、色々な物とその代金が書かれていた。 わかる人が見れば、これは今年度の学校予算案のデータだと気づくだろう。 そう、この部屋はとある高校の職員室である。 パソコンの画面に照らされている男の服の胸ポケットにはバッジがつけられている。 この学校の人が見れば誰でも男が職員であることがわかるだろう。 不意に男のケータイの画面から発せられる光の色が変わる。 画面には「デバッグ完了」の文字が浮かぶ。 それを見て邪悪な笑みを浮かべたその男は気づくことができなかった。 職員室のドアが音もなく少しずつ開いていくことに。
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