依存監禁

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裕一の言葉を遮るように、雪の人差し指が唇に押しつけられた。 「………」 雪は無表情で、ただ裕一を見上げているだけだった… 「…大丈夫だから」 しばらくしてから、そう告げられると、雪の人差し指が唇からそっと離れた。 雪の上に覆い被さったままの状態で、裕一は呆然と雪を見つめた。 「……」 …昔から、雪は裕一以外、誰にも心を開こうとはしてくれなかった。 学校では誰に対しても無視か、頷くか首を横に振るのみだと以前、聞いたことがある。 誰に対しても壁をつくる雪のその性格が災いして、いつも雪の周りには味方がいないそうだ。 もしかしたらみんなに邪険にされているかもしれない。 雪に味方ができる者がいるなら、それは実の兄で唯一の肉親の裕一だけだ。 その裕一までもが雪を拒絶してしまったら…雪は本当に一人ぼっち…… 「…しみる」 下から消え入りそうなほど小さい声がした。 見ると、雪の痣になりつつある頬が濡れていた。 雨漏りなんてないハズ……何故。 そう思っているとまた、雪の頬に雫が落ちた。 「……どうして泣いてるの」 (え、…) 雪に言われ、自分の頬に触れてみて初めて、濡れていることに気付く。 「あ、あ……ごめん、えと、頬…冷やさないと……氷とか…」 自分でも気づかぬうちに涙を流していた……妹の前で泣いた事に裕一は急激に恥ずかしく思った。 「…いい」 「え?」 「氷はしみるから…かわりにお兄ちゃんが…舐めて……」 無機質な雪の瞳には、何故か期待感が含まれているように感じる。 多分…雪の言っていることは本気なのだろう。 遠慮はしても雪が冗談を言わない子だということは裕一には分かっているから。 「お兄ちゃん……」 ふと、考え事をしていたら、雪は準備オーケーと言わんばかりに目を閉じていた。 「…アイスノン持ってくる…上からタオル巻けば大丈夫と思うから……」 裕一は雪から目を逸らして、そうはぐらかすしか選択肢はなかった。 「鬼畜…」
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