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「…………」
…いつの間に、眠っていたのだろうか。
目を醒ますと、そこは裕一のベッドの上だった。
そして、その事実を理解すると同時に身体を勢い良く起き上がらせた。
起きた場所が雪の部屋じゃないどころか身体の自由を奪っていた拘束すらも外れていたことに疑問を抱く。
(どういうことだ………確かに俺は………)
裕一は眉間を指で押さえながら必死に頭の中を巡らせ熟考するが、
―ガチャ…
それを遮るように裕一の部屋のドアが開かれた。
眼だけをドアの先まで追って、その姿を確認したと同時に嫌な緊張感で一筋の冷や汗が頬を伝った。
「……」
雪が一歩、裕一に歩み寄る…
『 オ ニ イ チ ャ ン 』
「……ッ!」
途端に、雪に監禁された日々が脳内で鮮明に浮かんだ。
「…るナ…!」
雪のことが怖い…
震える唇で、言葉にならない声で情けなく呟く。
…そしてまた一歩雪が裕一に近付いた時だった。
「来るなッ!!!」
反射的に裕一は声を張り上げた。
「………」
そこで、裕一に歩み寄っていた雪の動きが止まる。
「来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな…!!!」
頭を抱え込んで呪詛のように呟き続ける裕一に、雪はさっきより早く裕一に歩み寄って――後ろから裕一を抱きしめた。
「う、わあああああ!!!」
――マズい!
そう思った裕一は雪を振りほどこうと腕を激しく振る。
「……!」
すると、雪は仰向けで裕一のベッドに倒れ込んだ。
…その瞬間、裕一はチャンスだと思った。
「……ナメるなよ」
雪からマウントを取り、固く握りしめた拳を一発、鳩尾にお見舞いした。
「…!!」
裕一の遠慮のない暴力に対し、雪の表情が苦痛で歪む。
その反応を見た瞬間ゾクリと、よく分からない感情が裕一の中で走った。
(クク…)
霧のように一度は消えたその感情をもう一度確かめたくて、裕一は雪の体の上に乗ったままもう一回殴る。
「ッ……!」
殴ると雪が苦しそうにする…その反応がたまらなく楽しくて仕方なかった。
「ハハハハハ!」
雪を殴る内に、優越感で徐々に裕一の表情からは黒い笑みが浮かんでいた。
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