妹が壊れた日

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………。 「ぅ、……」 気がつくと、裕一はベッドの上に寝かされていた。 「…おはよう」 上から裕一の顔を覗き込むように、至近距離に雪の顔があった。 …雪に膝枕をされていた。 (なんだ。すべて夢だったのか……そうだよな) 雪の頭を撫でてやろうと手を伸ばそうとして、裕一は初めて異変に気付く。 「……!?」 手が動かせない。 見れば、手首が縄でぐるぐる巻きにされ、ベッドの柱にくくりつけられていた。 そこで裕一ははっと我に返る。 目だけをすばやく動かして部屋の様子を確かめる。 部屋の中は真っ白い壁に真っ白なベッド、学習机のみ。生活感はまるでない……ただ、一つ、机の上には白い熊のぬいぐるみが無造作にそこにおかれている。 そのぬいぐるみは以前に裕一が雪にプレゼントしたものだった。 それから察するに、ここは―― (雪の部屋…なのか?) 不本意だが、雪の部屋に入ったなんて何年ぶりだろうか… よく覚えてないが、少なくとも最後に雪の部屋に入った時はこんなにも殺風景ではなかったはずだ。 やはり、両親を失ったあの事故の日から雪は変わったというのだろうか… 「………………」 こんな状況でも、普段と変わらず、じっと裕一を見下ろす雪の無機質な瞳に、たちまち恐怖を感じ、裕一は青ざめた。 「な……なんだよコレは」 身の危険を感じ、抵抗をしようにも身体の自由がきかない。 情けないほど弱々しい口調ながらも、裕一はなんとか雪を睨みつける。 縄が肌に食い込んで、赤紫色に変色している。 気が遠くなるほど長い時間が経った気がする…… 「…嫌?」 表情は変わらぬまま、やや不満そうな声を上げる雪に対して、ようやく驚きから立ち直った裕一は素直な感想を述べた。 「ああ…。早くコレを解いてくれないか」
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