妹が壊れた日

4/6
前へ
/19ページ
次へ
「無理」 裕一の訴えもむなしく、雪は簡潔にそうあしらって、裕一の頭をそっと撫で始めた。 「………」 雪は一体何がしたいのだろうか…… どうして、雪に拘束されなければならないのだろうか…… 「何が…目的なんだ雪」 しばらく返事を待っても、雪は無表情のまま裕一の頭を撫でるだけで何も答えてはくれない。 無機質な瞳で裕一を見下ろすだけだ。 「……もしかして怒っているのか?…俺、雪に何かしたか…?」 すると、裕一の頭を撫でる雪の手の動きがピタリと止まった。 「…………………」 でも、やはり無言で裕一をじっと見つめる雪に、裕一はため息をついて諦めかけた…その時、 ―ぐい 無言のまま、雪の小さな手が裕一の顔を掴み引き寄せた。 「え――」 目をつむった雪の顔が徐々に目前まで迫ってくる……そして、 ―ちゅむ (な――!?) 雪の唇が裕一の唇に重なった。 「ンン……!!」 「……………」 十秒ほで経つと、雪はそっと裕一の唇から離れた。 「………」 雪の行動に、裕一は頭の中が真っ白になった。 「…お兄ちゃん」 「………なんだよ」 裕一は雪に非難の目を向け、わざと雪に分かるくらいの不機嫌そうな声色で言った。 「好き…」 しかし、そんな裕一の態度にお構いなしに、雪がまたキスをしようと顔を寄せてくる。 「…やめてくれ」 「……」 雪は裕一の顔を覗き込んだまま、わずかに首を横に傾げた。 「家族で…兄妹でこんな……絶対におかしいだろ…!」 身動きのとれない裕一は雪に伝わるように目で必死に訴えた。 「…どうして」 相変わらずの無表情で雪は裕一に聞いた。 「どうしてって……お前のために言ってるんだぞ」 裕一は気まずそうに、視線を雪の顔から真っ白な壁に移した。 「……私のためを思うなら…私を愛して」 すると、雪は覆い被さるように裕一に抱きついた。 ……首元に雪の吐息がかかって、少しくすぐったい。 「…分からない。雪…お前はどうしたら満足するんだ」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

642人が本棚に入れています
本棚に追加