妹が壊れた日

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裕一に抱きついた雪は目をつむって顎を裕一の肩にのせ、 「お兄ちゃんと…ずっと一緒…満足……」 裕一の耳元で、雪の呟くような小さな声でそう言った。 「な…何言ってんだよ。今までだってずっと一緒だったろ?」 裕一がそう言うのと同時に、やや不満そうに雪の眉がピクリと微動した。 ―カリ、 「…………」 そして無言のまま、雪は裕一の肩に指の爪を食い込ませる。 「いつッ…!雪…!」 鋭い痛みに裕一は顔をしかめた。 「…嫌……私は…妹は…嫌」 いつの間にか、雪は正面から向き合っていて、無表情だけど…どこか切なげでどこか寂しそうな瞳で…… 「…どうして?」 雪の顔を見てなんとなくそう感じても、やはり裕一にはその理由が分からなかった。 だから雪に聞いてみる。 「……。裕一は…麺の入ってないラーメン、綿の入れてないぬいぐるみ………熟女マニア…」 今度は…なんだか雪が不機嫌そうに怒っているように…なんとなく見えた。 あくまで雪は無表情なので、なんとなくだ。 しかし、雪の無機質な瞳を見つめてなんとなくでもそう感じられるようになったのは兄妹だからであり、長年のなんとやらである。 「なんか…凄くひどい言われようだ。熟女マニアじゃないから」 「ロリコン…?」 可愛らしく首をわずかに横に傾げた雪……心なしか、雪の無機質な瞳には期待の炎が宿っている気がする。 「なんでそんなマニアックな選択しかないんだ……他にだってあるだろ…お姉さん系とかさ」 「年上…マニア…」 「そのマニアって言うのやめて」 「裕一は年上の熟……女性が好き…?」 「なんていうか…俺には兄貴も姉もいないからさ……雪みたいに甘えてみたいっていうか…つか、甘えん坊のガキなんだよ俺は」 なんか自分の性癖を暴露してるようで言ってて恥ずかしくなる。なに妹相手に真剣になっているのだろうか…今、鏡を見ればきっと顔が真っ赤に染まってるに違いない。 ―きゅ… すると、雪が裕一の胸板にうずくまった。 「…裕一が甘えたい時は…私に甘えても…いい」 服を力無さそうに握る雪の震える手……それは、雪の心細さを表現しているように感じた。 「雪…お前――」 「裕一が熟女マニアでも…頑張って受け入れる…」 一瞬、顔を上げた雪の無機質な瞳がきらりと輝いたような気がした。 「だから違うぅぅっ!つか、兄貴を呼び捨てにしない!」
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