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人間の適応能力……あらゆる環境状態でも、一週間も経てば人間という生物は大概はその環境に慣れてしまう。
…それは、実の妹に密室の中で監禁されている裕一も例外ではなかった。
「……飯」
監禁生活三日目から裕一の手首の縄の拘束が外れたが、代わりに手錠が手首にかけられた。
これでどうにか自力で食べられる。
監禁した相手に食べさせられるなんて、屈辱以外の何物でもない。
「………」
裕一が食事を平らげる間も、雪は無表情で裕一のことをじっと見つめていた。
無表情だが、やはり少し嬉しそうだ。
(なに見てんだよコイツ……!)
監禁という理不尽な仕打ちからいつしか、雪に対する感情が恨みと怒りへ変わっていった。
「何が……」
スプーンを持つ裕一の右手が怒りで震える…
「一体何が面白いってんだ!お前はァッ!!」
遂に怒りが頂点に達した裕一は左手で茶碗を力の限り雪に投げつけた。
―ゴ、…
後先考えず、勢いよくそれが雪の頭に接触すると、鈍い音を響かせながら雪は下に倒れ込んだ……
「ハア…ハア……ぁ――」
息を乱しながら、無言のまま倒れ込んだ雪の姿を見た途端、裕一は一気に血の気がひいた。
目を閉じたまま雪は、額から血を流してピクリと微動だにしない。
「ヒィ……!?俺、が…やった?俺がぁああ……俺、おれ、…俺があぁあああぁぁあァあぁァァあぁあああぁ………………」
裕一は混乱に陥り、首を激しく横に振った。
「ぅぅ゛……あああ」
手錠をかけられた両手で頭を抱える……
「ごめんな…ごめんな雪ぃ……」
雪が死んだ…殺してしまった…
裕一は目を閉じて、涙を流した…
雪を…殺してしまった…殺した……殺して…殺した…殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺――
「痛いよ……」
「――!」
真っ暗の世界の中で沈んだ声が聞こえた……
「ぁ…ぁ……」
頭を抱えたまま、徐々に視線だけ雪の姿を追った。
「痛い…………痛いぃ…」
床に倒れ込んだまま、鳥だって飛んで逃げるような黒く沈んだ瞳が裕一の姿を確実に捉えていた。
今までの表情とは違う…完全に感情の失せた無表情で、まばたきもせずにずっと……見られている…
「痛いよ……痛いぃ…痛いよ……お兄ちゃん助けて……助けて……助けて…助けて……助けて……お兄ちゃん」
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