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場所はとある一室。
灯りはついておらず、窓もないため部屋は闇一色だ。
時折、ポチャン、ポチャンと雫が落ちる音が室内に響くだけで、それ以外のものは存在しない。
もちろん、生き物の気配さえも――――。
…………
………
……
…
しばらくすると、ガチャッと扉を開ける音がする。
黒しかなかった部屋に白い光が射し込む。
そして扉から光と共に入ってきた数人の人間。
暗闇の中を部屋の中央に向かってツカツカと歩んで行く。
大半は白衣をまとった研究員のようで、それぞれ資料らしき紙の束を手にしていたが、二人だけ違った。
一人は巫女のような格好をした女性。
艶のある藍色の髪をギリギリ引きずらない程度まで伸ばし、なびかせている。
本人は普段通りに装っているつもりなのだが、周りの人間から見れば、あきらかに彼女は疲弊していた。
足取りはふらつき、目は虚ろで呼吸も心なしか乱れている。
表情は悲痛以外の何も写していなかった。
その理由を知っている周りの者達は戸惑いながら彼女の後ろに目を向ける。
この中で彼女の容貌はどう見ても浮いてしまっているが、彼女の後ろを歩く人物に比べればまだマシな方だろう。
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