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一人の研究員が壁ぎわに向かい、そこにあるスイッチを押した。
すると部屋は天井にある電球により、一気に明るく照らされる。
暗くて見えなかった部屋の様子がありありと晒される。
中央にあるガラスでできた幅4メートルの中が空っぽの水槽と、壁からのびている白いホース。
それ以外の物は何も無かった。
誰かに背中をグッと強く押され、少年か少女か分からない人間は前のめりになりながら水槽にぶつかる―――事はなかった。
拘束具をまとったその身体は壁から衝撃をまったく受けることなく、水槽の壁をすり抜けた。
目隠しのせいで自らの状況を把握できていないせいか、しばらく身動ぎもしなかったが、足から伝わる感触と先程わずかに感じた違和感で何かの容器に入れられた事を理解したようだった。
周りを確かめるように足を滑らせながら少しずつ水槽の中を徘徊し始める。
その様子を見守りながら白衣の者達はこれから行われる『検査』の準備にとりかかる。
ガラス壁に空いている直径30センチの穴にホースを差し込み、抜けないよう固定する。
そしてホースの根元付近にあるパネルの前に一人だけ残り、それ以外の者達は水槽の周りに集まる。
彼女も同様、そばにいる。
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