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台風の接近で雨が横殴りに降っていた。
新人刑事の小出学は先輩の林のあとに続き現場に入る。
それにしてもすごい暴風雨だ。
現場のマンションの鉄扉は力いっぱい逆らわないと閉まらない。
やっとの思いで閉め、土間でスーツにかかった雨を払った。
体の左半分だけが濡れている。
髪も同じ方向で固まっていた。
突然、
『そこで雨を払わないで』
という低い女性の声が聞こえて小出は身を縮め見た。
これで現場は五回目だが、初めてみる女がじっとこっちを見ている。
(なんだこいつ…?)
新人だから声には出さないが、明らかに場違いな女だった。
スラリと背は高く、髪は肩まで、顔は可愛いよりキレイで、全身黒づくめの服を着ている。
一流の人が手を施せば女優にもなれそうだ、と思った。
キレイな女に男は油断する。
だから小出も少し力が抜けた。
隣の林がそんな小出に隠れて『チッ』っと舌打ちする。
『ダークが居るのか…』
(ダーク?)
聞いた事がない。
コレが初めてダークと出会った瞬間だった。
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