一目会ったその日から。

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首をだらりとさせて、 何かに取りつかれた様に指を動かす。 足を高く上げてリズムを取って、 たまに中腰で指を鍵盤に打ち付けて。 半開きにした口元。 眉間に寄せられたシワ。 自分の世界に入ってしまった様な彼の、その世界に引き込まれた。 私の中で、いっぱいになっていたのは最初、彼の奏でる[音]だったんだけれども、 そのうち[音]から[彼]そのものへ、対象がすり替わってしまっていた。 見れば見る程、苦しくて、 音に押されて倒れそうになって。 それは、 彼の存在が、耐性のない私の身体に急激に侵入した結果。 .
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