プロローグ

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妹が死んだ。 高校三年で進学も無事決まり、自由登校の日々を満喫していると知らない番号から着信があった。 着信主は警察だった。 無機質な感情の籠っていない声で、淡々と状況を述べるだけ述べて、後日警察署に来るようにとのことだった。 『朝倉澪さんの御家族の方ですか?澪さんの乗られたバスが崖から転落、炎上しました。現状は行方不明状態ですが、高さが高さなので生存率は高くないと思います。澪さんの私物を此方で確保しましたのでご連絡致しました』 呆然とした。何て返事をしたのか覚えていない。胸の真ん中に大きな穴が空いた感じだった。 父さんと母さんが交通事故で死んだ時は、こんな感情にはならなかった。俺が高一の時に二人でドライブ中にトラックに突っ込まれて即死だったらしい。特別、家族円満だったわけじゃなかった。夫婦間は円満だったが、親子間は冷え切っていた。それ故に兄妹間の絆は確かなものだったと思う。 幸いなことに一軒家で、事故も完全に相手に過失があるらしく、保険金と慰謝料は多額に支払われた。 そのおかげもあって、兄妹はバラバラに引き取られることもなく、金銭的にも二人とも大学卒業しても余るくらいの余裕はあった。なので、当時中学生の妹は、通学中に親と同じような事故に合わないように近所の高校か寮付きの高校を進めた。 妹の第一志望の高校は私立の女子高。山の上にある自然豊かな高校で、寮があり、家の近くにバス停から行ける高校だったので、お互いの意見が一致した。そして妹は、俺が地元の公立高校で二年に進級するにつれて、めでたく第一志望の高校に進学した。 それなのに……まさか、同じように交通事故に合うなんて……… 俺が薦めなければ、こんなことにならなかったかもしれない。
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