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「澪………」
肩くらいまである綺麗な髪を頭のやや上部で一括りにして、所謂ポニーテールにするのが彼女のヘアースタイルだった。いつも綺麗に纏められていて、動く度に左右に揺れるポニーの尻尾が可愛らしかった。
そんな澪が死んだ?何故?
気付くと一日が経っていた。寝ることも食べることも、欲求という欲求を忘れていた。
「警察行かなきゃ……」
もしかしたら澪のものじゃないかもしれない。澪はあのバスに乗っていなかったかもしれない。
漠然とした心もちで警察署に向かった。
でも、現実は厳しかった。警察署に行って受け取った物、それは見間違えることがない、澪の私物そのものだった。
俺は澪の私物を手に警察署を出た。
もう何も考えられなかった。
唯一の肉親を失った。しかも、遺体すら見当たらない状態らしい。
俺も死にたい……
そんなことを考えながら帰宅している時だった。
目の前を幼い兄妹が追い駆けっこをしながら通り過ぎて行った。
とても仲睦まじい兄妹だった。
その風景に昔の自分と澪の面影を重ねながら歩いていると、横断歩道の前で兄を追い駆けていた妹が転倒した。膝を打ったのか、赤くなっていて泣き始めてしまった。
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