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…人を二人運ぶため、重さはあたし一人の三倍。いつも通りの速さが出るはずも無かった。
「ゲヒッ…『闇球』」
無情に魔法は放たれる。一度に展開された大量の黒い球体。
方向転換しても…避けきれない!なら、防御…はダメ。受けきれる自信はない。…それなら…。
「『スパーク』!」
右手から放つ一筋の紫電。それは闇球にぶつかる…が、数と威力で負けている。当たり前のように掻き消えた。
相殺を狙ったけど…何で!?全く効いていない!?ケチって初級魔法使ったから…!?
思考の間に脅威は迫り…既に目の前にあった。
「や…」
恐怖で体が動かない。ガンマ達も動けない。…もうダメ…だわ。
そう思った。
その時、お互い触れられるくらい近く、目の前に一つの影が割り込んできた。
「…はぁ…」
呆れたようなため息を吐いた影…黒ローブは腰の辺りから刀を抜き取った。
「…動くなよ…!」
幼げな高い声で呟くように言った黒ローブは…。
正面から飛んでくる闇球に斜めに刀を当て、軌道をズラした。
その後も、次々と飛んでくる闇球から、自分に当たりそうな闇球だけを見据え、全ての軌道をズラした。
その姿は、まるで魔法が黒ローブを避けているようだった。
ズドドド…と後方、真横で連続した爆発が起こる。
「きゃ…」
爆発の余波に押され、足が地を離れそうになる。でも我慢。ガンマ達からも手は離せない。
かなり長く感じたが、5秒くらいで余波は収まった。
「…何で気付かれちゃうんだよ…もう…」
黒ローブは頭に手を当てて呆れているのか、貶しているのか分からないが、文句を言った。
「この馬鹿に言いなさいよ!…っていうか気付いてたわけ?」
「気配も消さずに隠れたつもりだったの?」
本当にそう思っているのだろう。声がまっすぐだった。
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