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とある国レグレスの国境に設置された北門。ここ、レグレスは山に囲まれた国で、その国の北門は切り立った崖に両脇を囲まれ設置されている。
普段は衛兵十数人の警備体制で守られるここは、その日に限って常時開門され、人で溢れていた。
門の外の武装を整えた兵士は、崖の間に壁を作るように固まり、殺気立っている。
そして、門で待機するのは…まだ兵士になるには少し早い、学生達だった。
彼らは兵士達の討ち漏らしを処理する役割を持つ。だが、それにしては過剰なまでに数が多い。
討ち漏らしが万が一出たとしても、この人数であればケガをする者も滅多に出ないであろう。
さて、物語は彼ら学生達…の一部、外の見張りの役割を任された生徒達からひっそりと始まる。
「…暇だね~」
間延びした口調で話す、栗色の髪を肩まで伸ばした女生徒、シータ=レニスは整った幼げな顔をしかめ、ため息を吐きながら、壁に寄りかかる。
「仕方ねえだろ…学生は見張りの役割しか与えられてねえし」
その隣で怠そうに崖の上を見上げる男子生徒、ガンマ=メリク。燃えるような赤い髪の短髪で、高い鼻にキリッとした目。世間ではイケメンと評価される美男子である。
「戦場に立たなくていいのよ。ありがたいと思いなさい。…あたし達は与えられた仕事をこなせばいいのよ」
背中まで伸びた長い金の髪を、後ろで纏め、ポニーテールにした女生徒、シャウラ=アクラは大人びた美しい顔に合った言葉で二人を宥める…が、その顔には不満が滲み出ている。
彼ら、青いローブを纏うレグレス魔法学園の高等部二年生は、万が一に備えて学園から収集された。
しかし、前線の兵士の数から考えて、敵である『魔物』はこちらには来る可能性は低い。
更に、実力者である学園の教師や、フリーの戦士をから成る『ギルド』の高ランク持ちが戦場に立つ今、生徒達に出番は無いに等しい。
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