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目の前のギルド員に報告をすると、そのギルド員は携帯電話でどこかと話し、その話が終わるや否や、シャウラの報告を否定し始めた。
このギルド員はシャウラから報告を受けた後、門のやや後方にある拠点に連絡をした。
拠点には、広範囲の魔力を探知し、場所を知らせる効果の魔法陣が設置されている。
この世界の生物は多かれ少なかれ、必ず魔力を持つ。そのため、門の近くに不審人物が存在した場合は魔法陣が探知するはずである。
しかし、シャウラの報告のあった付近に魔力の反応は一切無かった。
このような理由があり、シャウラの報告は信用されなかった。
「あたしは見たわよ!見間違いなんかじゃ無いわ!」
シャウラは怒鳴るようにギルド員に呼びかける。
「はいはい、じゃあ警戒しておくよ」
ギルド員は見るからに適当な態度で対応する。警戒などしないだろう。
それが分かったシャウラは、諦めた表情でギルド員の前を去った。
シャウラは自分の少し後ろで待っていたシータとガンマと合流する。
「どうだった~?」
シータはシャウラに駆け寄り、先程の様子から答えが分かっていながらもシャウラに問う。
シャウラは呆れ顔で首を左右に振る。
「ダメ。全く信じないわ」
大した調査もせず、その場に立っているだけの者に、自分達の報告が頭から否定されたことに怒りを覚えたシャウラだが、怒っても無駄だと分かるため、大人しく引き下がったのだ。
「…なあ」
落ち込み気味の二人に、ガンマが声をかける。
「俺達で確認して来ないか?」
「…はぁ?」
シャウラはガンマの考えに呆れたような声を漏らす。此処は戦場なのだ。身勝手な行動は避けるべきである。
ガンマに説教でも始めようとしたシャウラだが、思わぬ人物に止められた。
「いいかも~!証拠を持って行けばいいんだよね~!」
ノリノリでガンマの考えに乗っかるシータに戸惑うシャウラ。
「っしゃ!行くぞ!」
そして、止める間もなく二人は走り出してしまった。
「ちょっと!?…あ~!もう!」
その二人の後を、シャウラも仕方なく追いかけ始めた。
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