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†††
「…ミルク、気付かれたみたい」
時を遡り、シャウラ達が影を見たことを報告している頃。
崖の上に黒いローブを纏った者が一人。
「きゅぅ」
その肩辺りに浮遊する小さな白い竜が会話しているように鳴く。
白い竜は、歩くとしたら二足歩行であろう体で、腕と足、小さな翼を持っている竜だ。
「たはは…ちょっとドジしちゃったかもね…」
小柄な黒いローブがフードの下で苦笑する。
門の横を通った時、自分に向けられる視線に気付いた黒ローブ。
「…ま、多分人間の子供だし、問題はないよ…」
「きゅぅ!」
白い竜は同意するように元気に鳴く。
彼等は一つの目的のため、ここに来ていた。
「…んじゃ、そろそろ仕掛けようか…手筈通りに」
「きゅっ!」
黒ローブが指示を出すと、白い竜は敬礼して、小さな翼をパタパタと羽ばたかせて飛んでいった。
向かう先は、大量の魔物が軍を成す方向である。
「たはは…元気だねぇ…」
黒ローブは密かに苦笑すると、フードを深くかぶり直し、表情を真面目なものにする。
「…じゃ…行きますか!」
そう気合いを入れると、黒ローブは走り出した。
†††
「…」
空気が変わっている。今自分たちの踏み込んだ空間は、辺りとは全く違う空気を纏っている。
禍々しい空気に溢れ、今すぐ逃げ出したいくらいだ。
「でも…すぐそこ…」
地面の揺れには慣れた。すぐそこから金属音と爆発音が聞こえる。
…後は見るだけなのよ。
「シャウラ…」
心配そうにあたしを呼ぶ友達の声。
「…行くわよ」
いつでも魔法が使えるように集中。そして、あたしは前に進んだ。
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