3.守護の魔術師

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 現在時刻は七時を少し回ったところだろうか。七月の上旬とはいえ、この時間帯になると辺りは急に暗くなってくる。  明かりとなるのは道路の脇に立っている街灯だけ。  周りにマンションが林立する薄暗い道をわたしは魔術師と並んで歩いていた。 「ねえ、レイオットって色んな場所を旅してるんだよね? 今までどんな所に行ったことあるの?」  家に着くまでまだ時間がかかるので、なんと無しに隣を歩く青年に話しかけてみる。 「自分でも正確には覚えていないが、おおよそ人間が集まって暮らす街は殆ど行ったな」  マジっすか?  どんだけ放浪してるんだこの人は…… 「何でそんなにあちこちさ迷ってるの?」 「別にさ迷っている訳ではないがな。俺の〝本質〟が厄介な貌をしていてな。一処に留まっていては純化が難しいのさ」  ああ、何かそんなこと言ってたっけ。  魔術師は己の〝本質〟を純化しなければならないとか何とか。 「そんな厄介なことなら止めたらいいじゃん」 「それが出来ないから旅を続けているんだ。一般人には理解し難いだろうが、そうだな。呼吸や心臓が脈打つのと同じだと考えればいい」
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