3.守護の魔術師

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「魔術師に行動理由を聞くか……本来は無意味な問答だが敢えて応えさせてもらおう」  自由を奪われる程の傷を腕に抱えながらも、碧眼の魔術師は泰然と立ち上がり不遜に語る。 「我は魔術師レイオット・フロームンド。我が本質は〝守護〟。故に、我は汝の盾となり、汝の万難を排す剣となる」  レイオットは、既に周囲360度を包囲した怪物逹を見据える。 「確かに最早銃を握ることは出来ないが、心配するな。貴様らごとき利き腕が無くとも、全員漏れなく灰塵に帰してやろう」  レイオットが一度だけ浅く深呼吸をした。  それだけで彼を包む空気が変質していく。  息苦しい程酸素が濃くなり熱を帯びたような感覚。  まるで一ヶ所に魔的な力、則ち魔力が収束していくような…… 「固有術式を形成――崇拝対象は月、抽出する意味は加護と刑罰。個体照合、対象の軌道確認、座標修正、力場を収束、術式開放! 顕現、〝月を導く囚われの馭者(アールヴァク・アルスヴィズ)〟!」  レイオットの口ずさむ詠唱に合わせて、纏う空気が具現化する。  それはいくつもの光る球を形作った。  光球はわたしとレイオットを中心に廻る。  さながら天体の運行を間近で見ているかのようだ。  その人知を越えた光景はわたしの心を一瞬で奪った。 「綺麗……」
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