『肉屋夢想』

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異様な風貌の男は、特に警戒をする訳でもなく、特に目的があるでもなく、海沿いの道を歩いていた。 その背には『竜殺し』という名の肉切り包丁を背負っている。 革のバンドで縛られた包丁は包丁なのに両刃である。 (アイツはバカなのだろうか?) (今なら周りには誰もいないですね) (ああ、殺っちまおうZE) その男を道沿いの林に隠れて見つめる三人の男。 一人はコンビニ、一人は本屋、一人はレコード店だった。 レコード店はリュックから一枚のレコード盤を取り出すと、フリスビーを投げるような構えを取った。 「これで終わったら…すまないNA。破ぁ!!」 林の木々の間を縫うようにレコード盤が飛んで行く。 おかしな風貌の男との距離は30mほど。 その距離をスピードを緩める様子もなく詰め寄るレコード。 (当たるっ!!) 三人はそう思った。 しかし、男の耳は風切り音を捉えていた。
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