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魚屋が眠りこけてから1時間ほど経った頃、再びスナックのドアが開かれた。
「今日の獲物はこいつ?」
入ってきたのは和服を着た清楚な雰囲気の美人だった。
髪をアップにしていて、襟から覗くうなじがセクシーだ。
和服の女性は魚屋の隣に座ると、カウンターに突っ伏している魚屋に冷笑を浴びせた。
「そうね。…ところで、こんな方法で一週間の間、参加者を狩るのは効率が悪くないかしら?」
「でも、女は女の武器を使わなくちゃ…ね?」
「武器…。でも、どうやら無駄だったみたいよ」
「どういう意味…」
和服の女性が言葉を発するより早く、淡い灯りに鈍く光るものが和服の女性の首もとに突きつけられていた。
「あんな程度の酒じゃ潰れないぜぃ」
逆手で持った刺身包丁を和服の女性の首もとにやったままで、魚屋がむくりと起きた。
「あら?お酒に強い男って素敵よ…」
冷や汗をかいたままで和服の女性が言った。
僅かに動く事すら許されない。
魚屋の眼光の鋭さは活きのいいサンマのようだ。
「ふふ、やっぱり起きてたのね?悪い人だわ」
スナックのママが妖艶な笑みを浮かべたままで言う。
「ママに悪い人だなんて言われると嬉しいねぃ。悪い男は嫌いかぃ?」
「もちろん、悪い男は好きよ…でも、私はそれ以上に悪い女かも…ね」
そうは言うがスナックのママが動く気配はない。
まるで傍観者であるかのような態度だ。
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