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和服の女性は小料理屋だった。
この商店街バトルロワイヤルに参加している女性は少ない。
男だらけの大会で女性が参加して勝ち抜く可能性は少ない。
しかし、それでも参加するのは胸に秘めた理由があるからだ。
小料理屋もそうした人間の一人だ。
この闘いを勝ち抜いた人間に与えられるのは栄誉だけではない。
しかし、これは後に語るとしよう。
「アンタ…なに自分が関係ないみたいなツラしてんだよ!!さっさとコイツをどうにかしろよ!!」
「やれやれ…自分の状況がわかってないのかぃ?」
鋭く尖った包丁の先が微かに触れ、小料理屋の首から一筋縄の赤い線を生む。
「ぐっ…手を組んだのか!!」
「汚い言葉を使うのね?見た目と合わないわよ?」
「うるさいっ!!綺麗なだけで生きて行けるか!!」
「そうね…。でも、それでもお客さんの前では綺麗でいようとするのが夜の女のプライドよ。魚屋さん、包丁を下ろして離れて頂戴」
「いいのかぃ?」
「えぇ…昼の商店街はあなた達の物。でも、夜は私たち女の物。だから…」
スナックのママはアイスピックを逆手に持って、その笑みを崩さずに魚屋を見て言った。
「だがら、夜の戦いは女の仕事よ」
「こんのクソアマぁぁぁ!!」
完全にキレてしまっている小料理屋はカウンターを足蹴に、スナックのママに飛びかかった。
それを迎え撃つスナックのママは、アイスピックをア○ンストラッシュのように振る。
キィィン!!
甲高い金属音がして、後ろに飛ばされる小料理屋だったが、運良くソファに着地する事が出来た。
その手には和服に隠し持っていたのか、刃渡り二十センチくらいの包丁を持っている。
どうやら包丁で受けたようだが、和服の左側の袖が破けている。
アイスピックがかすったのだろう。
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