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魚屋は思った。
(和服の女…パンツ履いてねぇぇぇ!!)
思い切り飛び上がった小料理屋の和服がはだけ、魚屋の角度からバッチリ見えていたのだ。
魚屋は前屈みになりつつ後ろに下がると、心を落ち着かせる事に全力を尽くし始めた。
(…マグロが一匹、マグロが二匹、マグロが…って松方弘○邪魔っ)
そんな魚屋はさておき、
「あなた…何を焦ってるの?」
「むしろ私はアンタが落ち着き払ってる意味がわかんわね」
二人の女はにらみ合ったままだ。
「私には…どうしても参加する理由がある。ママにはそれが感じられない…ムカつくのよっ!!そういう面構えがさぁ!!」
小料理屋は和服の中から無数の小鉢を出してスナックのママに向かって投げつけた。
スナックのママはフェンシングのように斜に構えると、同じくフェンシングのように襲い来る小鉢を迎撃していく。
しかし、あまりの数に迎撃しきれず、体に数発ヒットする。
「ぬ…ママっ!!奴ぁ逃げる気だぜぃ!!」
小料理屋は小鉢を投げながら、さり気なく入り口へと向かっていたのだ。
「逃がさねぇ…ちっ!!しまった!!」
一度立ち上がったものの、再びしゃがみ込む魚屋。
(くそ…胸がはだけてんじゃねぇか!!)
治まりかけたところへのダメージで、魚屋はしばらくは動けそうにない。
「悪いね。二対一でやり合うほど間抜けじゃないのさ」
素早くドアを開けて逃げ出した小料理屋だったが、スナックのママは追わなかった。
少し哀しげな瞳で見送るだけだった。
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